- テレワークを始めてから腰痛が悪化した
- いろいろ対策したけれど、なかなか改善しない
- 腰痛を和らげる方法を知りたい
テレワークの開始に伴い、腰痛を発症した方、または腰痛が悪化した方は少なくありません。
腰痛は、放っておくと痛みが長引くケースが多く、日常生活に支障が出る、数年以上続く、など、さまざまな支障が生じる場合があります。
腰痛を緩和・改善するためには、原因を理解したうえで、ご自分の姿勢や作業環境を見直すのが重要です。
本記事では、テレワークに伴い腰痛が悪化する原因・自宅でできる対策方法・医療機関を受診する症状の目安を解説します。
腰痛でお困りの方は、ぜひ参考にしてみてください。
テレワークで腰痛が出る原因

テレワークを始めてから腰痛が発生した、または悪化した原因の多くは、以下4つのいずれかとされています。
- 原因①:姿勢が悪い
- 原因②:環境が良くない
- 原因③:運動が足りない
- 原因④:ストレスがある
それぞれの原因について見ていきましょう。
原因①:姿勢が悪い
腰痛を引き起こす原因のひとつが、姿勢の悪さです。
姿勢が悪いまま座りっぱなしで長時間過ごしていると、腰への負担が蓄積します。
腰への負担によって背中周辺の血流が悪化し、筋肉が硬直しやすくなるのが腰痛の原因です。
また、悪い姿勢は、肩・首・腰など全身に負担をかけ、呼吸を浅くするため、疲労感も増大させます。
姿勢が原因の腰痛は、座り方を意識すれば改善する可能性があります。
腰や背中に負担をかけない座り方については、本記事の「腰痛を軽減させる正しい座り方」を参考にしてみてください。
原因②:環境が良くない
作業に適さない自宅の環境が腰痛を引き起こす原因になっている場合もあります。
ほとんどのオフィスでは、長時間作業を考慮した機能的なイスや机が整備されています。
一方、自宅ではダイニング用の家具や座椅子などで作業する方が多い傾向です。
環境による腰痛の場合、解決策として2つの方法があげられます。
- 自宅にあるもので可能な限り腰に負担をかけない環境を作る
- お金をかけて、腰痛改善に効果のあるイスを購入する
「1.」の解決方法については、本記事の「お金をかけずに腰痛を改善する方法」で解説しています。
「2.」の解決方法は、本記事の「テレワークに適したイスの選び方」を参考にしてみてください。
原因③:運動が足りない
運動不足もテレワークにおける腰痛の原因です。
運動不足によって筋力や柔軟性が低下し、背骨や腰椎を支える力が弱まり、腰痛が発生するためです。
また、腰痛だけでなく、肩こりや血行不良による疲労の蓄積にもつながります。
運動不足による腰痛への対策としては、以下の行動が有効です。
- ウォーキング
- ジョギング
- スポーツジムでの運動
時間が取れない場合は、作業の合間に軽いストレッチをするだけでも違います。
簡単なストレッチ方法は、本記事の「【簡単】腰痛に最適なストレッチ」で解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
原因④:ストレスがある
腰痛は身体的な要因だけでなく、心理的な側面も原因となる場合があります。
ストレスによる緊張は交感神経を優位にし、血流悪化や脳内物質の乱れから痛覚過敏を招くためです。
結果として腰痛や肩こりといった身体症状が現れ、さらなるストレスを生むという悪循環に陥る可能性があります。
テレワークで腰痛を引き起こす座り方

テレワーク中に無意識にとっている座り方が、腰や背中の筋肉に大きな負担をかけている場合があります。
特に注意が必要なのが、以下の座り方です。
- ずっこけ座り
- 前のめり座り
- 横座り
それぞれの座り方の特徴を見ていきましょう。
ずっこけ座り

「ずっこけ座り」は、お尻を座面の前方に滑らせるようにし、背もたれに強く寄りかかる座り方です。
疲れてきたり、少しリラックスしようとしたりする時に、ついなりがちな座り方です。
極端な場合、体はほとんど寝ているような状態で、首だけが無理に起き上がっているような姿勢になる場合もあります。
ずっこけ座りで腰痛が発生する理由は、本来体重を支えるべきお尻の骨(坐骨)ではなく、尾骨というお尻の先端部分に集中してしまうためです。

また、背骨が持つ自然なS字カーブが崩れてC字型のように大きく湾曲し、特に腰の部分の正しいカーブが失われてしまいます。
その結果、腰への負担が一点に集中しやすくなり、腰痛が発症します。
場合によっては椎間板ヘルニアを引き起こす可能性もある座り方です。
前のめり座り

「前のめり座り」とは、画面に集中しようとして、無意識のうちに顔や上半身が机やパソコンに近づき、背中が丸まる姿勢を言います。
前のめりの姿勢になれば、体重の1割ほどあるとされる頭を、首・肩・腰の筋肉で支えなければなりません。
その結果、腰と首に大きな負担がかかり続け、筋肉の緊張や血行不良を引き起こし、腰痛を悪化させる原因となります。
特に床に座って低いテーブルで作業する時や、ソファに座って膝の上にノートパソコンを置いて操作する時などに起こりがちな姿勢です。
横座り

「横座り」は、床に座って作業をする際に、正座の状態から足を左右どちらか一方に崩して座る姿勢を言います。
イスに座っている場合でも、無意識に片方の足に体重をかけたり、足を組んだりするのも、体にとっては左右非対称な「横座り」に近い状態です。
横座りをすると、骨盤が上下や斜めに傾くため、背骨がバランスを取ろうとして歪んでしまいます。
結果、骨盤や背骨に歪みが生じ、腰回りに不均等な負担がかかります。
横座りは、腰痛だけでなく、肩こりや頭痛といったさまざまな不調を引き起こす原因となる座り方です。
腰痛を軽減させる正しい座り方

腰痛の改善には、正しい姿勢で座るのが最も効果的です。
- イスに深く腰掛ける
- お尻を背もたれにしっかりと当てる
- お尻全体が座面で支えられている状態を作る
- 上体をまっすぐに起こす
- 「骨盤を立てる」を意識する
背骨がまっすぐに伸びるイメージで、背筋や首も意識して伸ばします。
座面に対して骨盤を垂直に「立てる」イメージを持ち、立っている時と同じような上半身の形になるよう意識しましょう。
床座りの場合も「骨盤を立てる」を意識すると、良い姿勢を保てます。
また、正しい座り方をするためには、足の位置や膝の位置も大切です。
- 膝の高さは足の付け根よりもやや高め
- 足裏全体が床につくようにする
必要に応じて、イスの高さを調整したり、足台を使用しましょう。
ほかにも、関係ないと思われがちな肘の位置も、腰痛に影響を与えます。
- 肘の角度が約90度になるよう意識する
- 手首の力は抜き、自然な状態になるように置く
作業中も、こまめに正しい姿勢に直すよう心がけるのが大切です。
お金をかけずに腰痛を改善する方法

高価なイスやデスクを用意しなくても、自宅にあるものを活用したり、日々の習慣を少し変えたりするだけで、腰痛が改善する場合があります。
- クッションやタオルを活用する
- パソコンやイスの高さを調整する
- 定期的な休憩をはさむ
- 軽いストレッチや体操をする
いずれも手軽に取り組める方法です。それぞれのポイントを解説します。
クッションやタオルを活用する
正しい座り方を意識していても、長時間作業していると姿勢が崩れてしまう場合があります。
その際は、お尻の後ろ側に折り畳んだタオルを入れましょう。
お尻の後ろにタオルを入れると、骨盤の前傾をサポートし、正しい位置に持ってきやすくなるためです。
また、背もたれの腰部分にクッションを挟むと、背中の丸まりを防止し、正しい姿勢の維持にもつながります。
特に猫背の方や、ずっこけ座りになりがちな方におすすめです。
パソコンやイスの高さを調整する
デスク・イス・パソコンモニターの高さも、腰痛改善につながります。
それぞれの適した高さは、以下のとおりです。
デスク | 頭・首・肩に無理のない角度の高さ |
---|---|
イス | 足の裏全体が地面に着く高さ |
パソコンモニター | 目線を水平に保てる高さ |
低いデスクでノートパソコンを使用していると、自然と頭が下がり、前のめりになる原因となってしまいます。
作業中はなるべく目線を水平に保つことで、体への負担を軽減できます。
可能な範囲で体に負担のない作業環境を整えるのが、腰痛改善への近道です。
定期的な休憩をはさむ
長時間同じ姿勢でい続けると体に疲労が蓄積し、筋肉がこわばって血行が悪くなり、腰の痛みを引き起こします。
そのため、定期的な休憩を挟んで血流を改善するのがおすすめです。
可能であれば、1時間に1回はイスから立ち上がる時間を作りましょう。
意識して休憩を挟めば、腰への負担が集中するのを防ぎ、痛みの悪化防止につながります。
軽いストレッチや体操をする
お昼休憩や就業後に軽いストレッチや体操を取り入れるのもおすすめです。
ストレッチは、体の緊張やこわばりをほぐし、血行を促進する効果があります。
首・背中・手足などを中心に、無理のない範囲でゆっくりと伸ばしてみてください。
ストレッチや体操は気分転換にもなり、テレワーク中に感じやすいストレスの軽減にも役立ちます。
どのような体操をしていいか分からない方は、本記事の「【簡単】腰痛に最適なストレッチ」を参考にしてみてください。
テレワークに適したイスの選び方

お金をかけられるのであれば、腰に負担のかからないイスを購入するのもおすすめです。
腰痛の改善に効果があるイスは、主に2種類あります。
イスの種類 | 特徴 |
---|---|
オフィスチェア | ビジネス用に作られているため、長時間の使用を前提としている快適な座り心地をベースとしたものが多い座面の高さ・背もたれの角度を調整できるものもある色やデザインのバリエーションが豊富安価なものも多くある |
ゲーミングチェア | 長時間の作業に適した設計になっている深いリクライニング機能を搭載しているものが多い主にパソコン作業に最適化されている価格帯は高い傾向 |
イスを選ぶ際は、機能だけでなく素材にも注目しましょう。腰痛を予防したいのであれば、高反発素材がおすすめです。
高反発素材は体が沈み込みにくいため、腰回りの圧力を分散し、腰やお尻への負担を軽減してくれます。
また、骨盤を立てた正しい姿勢を維持しやすいのも特徴です。
【簡単】腰痛に最適なストレッチ

仕事の合間や就業後にストレッチを取り入れるのも、腰痛の予防や改善に効果的です。
本章では、誰でも簡単にできる以下のストレッチを紹介します。
- 腰の周辺を伸ばすストレッチ
- 体の裏側全体を伸ばすストレッチ
- 背中の筋肉の柔軟性を取り戻すストレッチ
- お尻の筋肉と太もも裏を伸ばすストレッチ
特別な道具も場所も必要としないため、無理のない範囲で日々の習慣に取り入れてみてください。
ただし、腰の痛みが強い場合の無理なストレッチは禁物です。
腰の周辺を伸ばすストレッチ
長時間の作業で腰回りの筋肉が硬くなると、周りの組織に負担がかかったり、血行が悪くなったりして腰痛が発生します。
そのため、腰回りの筋肉を伸ばしてあげるのが大切です。具体的な方法は、以下のとおりです。
- 膝を少し広げてイスに座る
- 上半身をゆっくりと前に倒す
- 背中が伸びているのを感じる
- ゆっくりと上体を起こす
- 首を回したり、肩を上げ下げする
- 一連の動作を3〜5回繰り返す
イスに座ったままできる簡単なストレッチのため、テレワークの合間などで試してみてください。
体の裏側全体を伸ばすストレッチ
腰周辺の筋肉だけでなく、体の裏側の筋肉の硬さや、アンバランスさが原因で腰痛が発生する場合もあります。
そのため、体の裏側全体を伸ばせば、腰痛の改善につながります。ストレッチの方法は、以下のとおりです。
- 足を肩幅より広く開いて立つ
- 息を吐きながら、5秒ほどかけて上半身をゆっくりと前に倒す
- 体の裏側全体が伸びるように意識する
- 息を吸いながら、ゆっくりと体を起こす
- 息を吐きながら、5秒ほどかけて上半身を後ろに反らす
- 一連の動作を5回ほど繰り返す
ストレッチをする際は、膝が曲がらないように注意しましょう。
体が硬い場合、最初はきつく感じるかもしれませんが、慣れてくると筋肉の伸びが心地よく感じます。
背中の筋肉の柔軟性を取り戻すストレッチ
体の中心部、特に背中の筋肉の柔軟性を取り戻すためのストレッチです。
背中の筋肉をほぐして柔軟性を高めれば、慢性的な腰痛の痛みの軽減につながります。
- 胸の上で両手をクロスさせる
- 息を吐きながら、5秒ほどかけて上半身を後ろにねじる
- 息を吸いながら、ゆっくりと上半身を正面に戻す
- 再び息を吐きながら、5秒ほどかけて上半身を反対側の後ろにねじる
- 息を吸いながら、ゆっくりと上半身を正面に戻す
- 一連の動作を5回ほど繰り返す
上半身をねじる際、下半身も一緒に動かないよう、正面を向いたままにするのがポイントです。
お尻の筋肉と太もも裏を伸ばすストレッチ
お尻や太ももの裏の筋肉(ハムストリングス)は、骨盤から直接伸びている筋肉です。
2つの筋肉が硬くなると、骨盤が後ろに引っ張られやすくなり、腰の骨に負担がかかって腰痛が発生する場合があります。
そのため、腰痛の予防や改善には、お尻と太ももの裏の筋肉を伸ばすのが重要です。
- 片方の足を前に一歩出す
- お尻を後ろに引くイメージで、前に出した足のつま先を上げる
- 反対側の足の膝は軽く曲げる
- お尻と太ももの裏側が伸びているのを感じる
- 10秒ほど同じ姿勢をキープする
- 一連の動作を反対の足でも行う
- 左右の足で、交互に5回ずつ行う
深呼吸しながら、ゆっくりと筋肉を伸ばすのがポイントです。
腰痛で病院を受診する目安

テレワークを始めてから腰痛が悪化した場合、症状によっては病院を受診したほうが良いケースもあります。
以下のいずれかに当てはまる場合は、病院の受診をおすすめします。
- 時間や体の動きに関係なく同じ箇所が痛い
- 腰痛と同時に急激に体重が減少した
腰痛の原因はさまざまで、姿勢の悪さや長時間同じ姿勢でいること以外にも、原因となる病気が隠れている場合があります。
姿勢を正したり、作業環境を整えたりしても腰痛が消えず痛みが悪化する場合は、整形外科などの医療機関の受診も検討しましょう。
鍼灸は腰痛の改善に効果がある

テレワークによって腰痛が悪化し、セルフケアだけでは改善が見られない場合、鍼灸治療で腰痛が改善する可能性があります。
鍼灸治療とは、注射針よりもずっと細い専用の「鍼(はり)」を使い、体のツボや硬くなった筋肉などを刺激する治療法です。
鍼によって腰痛が改善・軽減するメカニズムは、以下のとおりです。
- 鍼が筋肉を刺激すると、脳は刺激を異物と認識し、痛みを和らげる物質を出す
- 鍼で刺激された筋肉には血流が集中し、血行が改善される
- 血液中の酸素や栄養が筋肉に届きやすくなり、筋肉の治癒を助ける
- 血液の循環が改善され、こわばった筋肉を緩める
鍼灸治療は、体のバランスを整え、人が本来持っている自己回復力を高めるのを目的とした治療法です。
薬を使わずに腰痛を改善させ、かつ体のバランスを整えたい方は、鍼灸も候補のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ:テレワークでの腰痛にはストレッチや環境改善の対策が大切

テレワークが普及しつつあるなか「腰痛が悪化した」と悩む方は少なくありません。
腰痛の主な原因は、不自然な姿勢や、デスクワークに適さない作業環境によって、骨や筋肉への負担がかかるためです。
疾病を伴わない腰痛は、姿勢の改善や、習慣の見直しによって改善されるケースが多く見られます。
腰痛に悩んでいる方は、本記事で紹介した負担のかからない姿勢を意識したり、適度な体操を取り入れるのがおすすめです。
セルフケアを試しても症状が改善しない、または痛みが強い場合は、医療機関の受診や鍼灸治療も検討しましょう。
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